東亜大学留学レポート

東亜大学校【2016年度後期帰国】交換

レポート作成Y.M

私は3回生の時に1年間東亜大学へ交換留学に行きました。私は、コリア語研究コースに所属しており、大学に入ってから韓国語の勉強を始めて、留学の出発前の2回生の終わりまでの韓国語勉強歴は約2年で大体、初級程度の読み書きや会話はできていた程度でした。

韓国への交換留学に行きたいと思った理由は、韓国で本場の韓国語を学び、それを使って生活してみたいと思ったので交換留学に行きました。釜山の大学を選んだ理由は留学の期間が1年間と韓国の交換留学の中で一番長かったからです。また、韓国へはソウルに2回ほど行ったことがあるので、ある程度地理を知っているソウルより初めて行く釜山に行く事にしました。地理がわかっていると、道を聞く場面などで韓国語が使える機会が減るのと思ったからと、以前から韓国の第2の街の釜山へ行きたかったからです。

日本にいたときは「短い期間だけど韓国にも行ったことがあるし韓国語もある程度できるから大丈夫だろう」と思っていました。よく行く鶴橋のコリアンタウンの在日コリアンの方からも韓国語が上手だともいわれていたからです。しかし、いざ現地について生活をしてみるとほとんどコミュニケーションを取ることができませんでした。釜山ではソウルと違って「釜山マル」と呼ばれる方言があります。日本語で言うと関西弁に近い方言です。ネイティブの標準語でさえもスピード、語彙などの面でままならないのに方言を使って話をされると全く分かりませんでした。

言葉の面だけでなく、自身の性格の問題にも直面しました。留学へ行く前は、「毎日韓国人と日本人、そのほかの国の友人たちとワイワイ過ごしている」留学生活を想像していましたが、留学の約1か月で対人関係の面で問題が起きて留学先の日本人グループから孤立しました。今まで、対人関係の面で問題が起こっても、「ほかに友人がいるから大丈夫だ、別に友人は自分には必要ないから大丈夫だ」と考えてあまりそれについて考えたり、解決しようと努力しようとしませんでした。そもそも、自分の性格上、自分の行動、言動の何が問題なのか、トラブルの原因になっているのかを気づきたくても気づけませんでした。
この期間は本当に苦しい期間でした。学校に通うことも苦しかったし、部屋にいるときも苦しかったです。(ルームメイトが日本人だったからです。)1日中気の休まることがなかったので、「このまま留学をやめて日本に帰ろうか」と何度も考えたこともありました。事実、大学が休暇に入った途端、日本にすぐ帰りました。日本に帰れた時は本当に解放された気分でした。
結果から言うと、一時帰国したことは正解でした。帰国し、家族、友人たちに留学先で孤立していることを伝えたことにより、自身の性格や行動の問題点に気づくことができました。自分では全然わからなかったことが自分をよく知っている人から指摘されたことにより、自身の改善すべき目標が見えました。また、後述のそれらの問題を起こすことの原因についても分かったからです。休暇明けにまた韓国に帰ったとき、問題点を改善することを意識して日本人たちと接しました。そうしていくうちに、最初は彼らと壁を感じていましたが、時間がたつにつれて徐々になくなっていったように感じました。

留学してよかったことは第一に現地で「生の」韓国語を学べたことです。日本ではネイティブスピーカーから韓国語を学べる機会はあっても、それを実際に使ってみる、「実践」の機会が限られます。(韓国語を学ぶ90分という短い時間、コリアンタウンを訪れたとき・・・くらいでしょう。)しかし、現地では「実践」をできる時間は授業中のみならず、食事をするとき、人と会話するとき、街を歩くとき・・・など1日のあらゆるときがそうです。むしろ、韓国語を使わないと生活できませんから自然と語学力は上がります。私自身も留学に行く前といった後ではその差は格段であると感じます。

次に、自分自身と向き合えることです。私は日本にいたときにわからなかった自分の性格や行動の問題点に気付くことができました。それだけでなく、私の場合、それらの原因に気付けたことが大きかったです。留学期間中や過去に起こった対人関係の問題の原因を気づくことができました。それは自閉症スペクトラム障害の一種である、「アスペルガー症候群」でした。私は軽度のアスペルガー症候群なので、いわゆる「普通」の人とあまり見分けがつきません。アスペルガー症候群であると気づかれにくい人なので「変わっている人」や「わざと問題を起こしている人」と見られます。私自身も過去に何度も対人関係のトラブルを経験してきました。今回、留学に行って大きな、そして決定的な対人関係の壁にぶつかるまで、自分がアスペルガー症候群であると分からなかったほどでした。なので、「どうして自分は他の人より劣っているのだろう」とか「自分はトラブルばかり起こしてしまうダメな人間だ」と自分を責めてばかりいました。しかし、アスペルガー症候群であると気づいたときに心が救われました。原因が分かったので、その対処法がある程度明確になったからです。また、失敗をしたときに自分を責めることもなくなりました。むしろ、「アスペルガー症候群が起こしていた問題だったか。よし、この問題を解決して見せよう」と解決するための「やる気」がわくようになりました。まだ、アスペルガー症候群と分かったばかりなので、それが引き起こしている問題が具体的に何なのか。それらを防ぐための対策が何なのかがわかりません。手探りでそれらを探し始めている途中です。(軽度なうえ、個人ごとにケースが異なるからです。)気づくまでの時間はかかりましたが、留学に行かなかったらそれがわからなかったでしょう。

最後に、普段の「当たり前」が「当たり前」ではないことに気付くことができたことです。例えば、家族がいること、その家族が家事をやってくれること、食事を満足に食べることができること、言葉により意思疎通が不自由なく通じること・・・・挙げたらきりがありません。それらが「当たり前」に存在しないこと、「本来は」自分でしなければならないことに異国での一人暮らしを通して気づき、自身でそれを感じることができました。留学に行く前よりあらゆることに対して「ありがとう」と感じることができていると思います。

私は今回、この交換留学に行ってよかったと思います。確かに、自身が思い描いていた留学生活を送ることはできませんでした。正直、「あの時こうすればよかった」という後悔もないと言えば嘘になります。しかし、それとはかけ離れていても、後悔があっても、良い留学生活を送ることができたと思いますし、自分自身も少しですが成長できたと思うからです。

私は留学で得た経験、語学力、何よりも自身の今後の課題や改善点に気づけたことを無駄にしたくありません。留学に行く前は、留学の期間の終了が「ゴール」であると思っていましたが、それらを得ることのできた今が「スタート」であると今では思います。経験はこの先の人生の為に活かし、語学力は資格の取得や外国人とのコミュニケーション、就職、さらには日韓の友好の為に活かしたいと思っています。アスペルガー症候群という課題もいつか自分がまたこのレポートを読んだときに「あぁ、こんなこともあったな」と思えるほどに改善していきたいと思います。

これから留学へ行こうと考えている人はぜひ、留学という貴重な機会を最大限に活かしてください。留学という機会は、語学はもちろんですが、何よりも、その中で得られる経験は自身の人生の糧になると思います。一番良いことは自分の望みどおりの、もしくはそれ以上の留学生活を送ることですが、たとえ、私のように思い描いていたものとは違うものとなっても、そこから得られるものがあるはずです。

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釜山港を望む釜山タワーがある「龍頭山公園」。私のお気に入りの場所。

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帰国前日、現地でできた中国人の親友とチゲ店にて。

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韓国語学堂の先生とクラスメートたちとピクニック。釜山市民公園にて。