コメンスキー大学留学レポート

コメンスキー大学【2015年度後期帰国】交換

レポート作成M.N

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【履修した講義】

*Academic Writing

 英語での学術論文の書き方を学ぶ授業です。資料の探し方、引用の仕方などをMLAという英語論文のスタイルに則った書き方を学びました。試験はなく、最終課題はshort essayでした。今まで勉強した英語論文(MLA style)のルールに沿っていればテーマは自由で、1800wordsほど書かなければなりません。

 

*European folklore and folkloristics

 ヨーロッパ各地の神話や伝説を通して各地の風習や文化を学ぶ授業です。ケルト神話、吟遊詩人、アーサー王伝説、狼男、ヴァンパイア、ロビン=フッド…など日本でも馴染み深い題材を扱いました。パワーポイントでの完全講義形式の授業で、先生の講義の他、毎週3人ずつがおのおの指定の資料に基づいたプレゼンをしました。一問一答形式の期末試験がありました。

 

*Introduction to the History of Slovakia

 1~3人1組で指定された時代の歴史についてプレゼンを行い、みんなでディスカッションをしていくという授業でした。ただ、プレゼン中に先生が詳しい解説をはさんだり、突然他大学から教授がいらっしゃって講義をすることがあったりしたので、授業期間中に全員のプレゼンが終わりませんでした。留学生は私1人だけだったので少々心細かったですが、プレゼンはクラスメイト2人のグループに混ぜてもらい、かなり助けてもらえたので期間中に終えることが出来ました。「歴史を知る」というよりは、調べたうえで「なぜそうなったか」を考え意見を述べなければならなかったので、私にとってはかなり新鮮な形式の歴史の授業でおもしろかったです。成績はプレゼンで決まりました。

 

*Popular Culture and National Identity in Central Europe

 スポーツ、音楽、映画などを通じて中欧の文化を学ぶ授業です。上半期が先生による講義形式の授業、下半期が生徒によるプレゼンでした。授業以外に映画鑑賞の課題があり、指定された中欧の映画を先生から借りて、感想文を提出するというものでした。とても気さくなニュージーランド人の先生で、課題やプレゼンテーマに関してもかなり寛容で全体的に自由度の高い授業でした。またnoodle(E-learning)を通して感想文やプレゼンに関してひとりひとりフィードバックがもらえたので、モチベーションに繋がってよかったと思います。最終課題はessayでした。

 

*Slovak Language A1-1,A1-2

 初心者向けのスロバキア語コースで、週に2回、1年間通してありました。大学の正式な授業ではないので受講者の殆どが仕事でスロバキアに暮らしている社会人でした。外部組織が運営する授業ですが、学生は単位が取得できます。日本の語学教育とは全く違い、実用的なものを扱う上に授業のスピードがとても早く毎回ついていくのが大変でしたが、授業が進むにつれて日常生活でわかる単語やフレーズがどんどん増えていったので、達成感が味わえた上、先生にもクラスメイトにも恵まれていたのでとても楽しい授業でした。期末ごとの試験がありました。

*Introduction to Central European History 
1年生向けの授業で中欧(現在のチェコ・スロバキア・ポーランド・ハンガリー・オーストリア東部周辺)の歴史について総合的に扱っています。セメスター中に決められた題についてのプレゼンテーションを2回しないといけません。成績はプレゼンに加えて一問一答形式の期末試験のがありました。


*Fin-de-siècle Vienna 
 19世紀末から20世紀初頭にかけてのウィーンについて様々な方面から考察する授業です。毎回20ページ前後のreading assignmentがあり、その内容について授業が進みます。生徒に意見を求められdiscussionになることも多いです。テストはありませんが、毎回readingについてのshort essayを提出しないといけません。


*Relations of the Visegrad Four Countries with China 
 ヴィシェグラード4国(チェコ・スロバキア・ポーランド・ハンガリー)と中国の関係を政治経済などの側面から考える授業です。毎回20ページほどのreading assignmentがあり、それをもとにしたdiscussion形式の授業です。中間試験と期末試験があり、論文を短時間で書かないといけなかったことが大変でした。

 

【留学先、および現地での生活について】

大学がある首都のブラチスラバ市内にはショッピングモールがいくつもあり、もし日本から何も持って行かなくても大抵の生活必需品が1日で揃うくらいに充実しています。ただ、他のEU圏の都市に比べると日本食を扱っているお店は少なく高額なので、自炊に必要となるような調味料は渡航の際に持って良いです。私は基本的に自炊していたので、顆粒だしや味噌などは和食を作る際にとても役立ちました。買い物をする時は、なるべくクレジットカードを使っていました。どうしても現金を使わないといけない場面だけ、あらかじめまとめて日本円から換金しておいた現金を使うようにしていました。大抵の場所でカードが使えたので問題ありませんでした。

幸運にもスロバキアの気候、風土などは自分に合ったものだったと思います。天候は日本と大差なく、むしろ自然災害は皆無と言ってよいほど無いので、1年を通して穏やかに過ごせました。食事は乳製品や肉料理が主でした。内陸国のため魚介類はほとんどありませんでしたが、野菜や果物が新鮮で手ごろな値段だったので、食生活はバランスよく充実していたと思っています。また首都でも治安は良好で、怖い思いは経験することはほとんどなかったですが、スリや盗難は多発していたので最低限の注意が必要だと感じました。大学の建物は市内に点在しているので一概には言えませんが、私が通っていた人文学部の建物はドナウ川沿いの市内中心部の旧市街近くに位置しており便利は良かったと思います。寮からはバスなど使って20分ほどかかりますが、他の学部に比べると近い立地です。

 ブラチスラバ市内は中央ヨーロッパに位置し、各国へのアクセスが良好です。各国へ向かう電車・バス・飛行機が充実しており、隣国オーストリアの首都ウィーンへは1時間もかかりません。スロバキアの通貨はユーロながら他のユーロ圏諸国に比べ物価が低いため、旅行資金として回せる費用を確保することが出来ました。 ヨーロッパとしてまとめて見てしまいがちでしたが、各地へ旅行して実際に様々なものを自分の目で見られた事によって、国というまとまりだけでなく地域によって人や文化も様々だということに気付けました。スロバキアに留学したからこそ出来た体験だと思います。

【大学について】

 日本の大学イメージとはかなり異なっていたように感じます。私が取っていた授業は全て少人数制で先生と生徒の距離が物理的にも精神的にもとても近かったことが印象的でした。また所属コースには留学生がほとんどいなかったので、現地の学生と仲良くなれる機会が多かったのも良かったです。留学前のイメージよりは現地の学生はシャイでしたが、そこに親近感が湧いて授業に早くなれることが出来ました。しかし、初めのころは発言を促されても思うように言うことが出来なかったり、先生が何を言っているかわからないことが続いたりしたのが辛かったです。友人の助けもあって少しずつわかるようになってきたときは、とても嬉しかったですし友人とより仲良くなれるきっかけとなりました。

【留学を終えて】

 日本では出来なかった、もしくはすることはなかったであろう様々な経験を積んだ1年でした。渡航前の準備期間を通して苦労しましたがその苦労もよい経験と言えます。特にビザの取得は自分の知らないところで問題が発生し、それを解決することも出来ず精神的とても苦しい時期がありました。ビザ関係で苦労していた(シェンゲン協定国外からの)留学生は多かったので、手続きが終わる最後の最後まで気を抜かないことが重要だと思います。

 留学を終えて思うことは、この時期にスロバキアに留学出来てよかった、ということです。もともと興味のあったヨーロッパでしたが、1年を通して良い面も悪い面も自ら目にすることが出来き、自分なりの解釈を持つことが出来たというのがひとつの成果だったと思います。様々な国籍、言語、考え方を持つ人と出会い話せたのはスロバキア・ヨーロッパだからこそ出来たことだと思っています。また今年のヨーロッパは多くのテロ事件や移民・難民問題が連日報道され、毎日考えさせられました。旅行先で中東から到着したばかりの難民を目にしたときは、本当にショックで未だに忘れることが出来ません。これらの経験がヨーロッパだけでなく世界が抱える問題を様々な国籍の人と議論するきっかけとなりました。今後もこの問題に関心を持ち続けたいと思っています。語学面についても自分の中で答えを出すことが出来ました。英語が世界の共通言語だということ、コミュニケーションの重要性を再確認することが出来たので今後も意欲的に英語の勉強を続けていきたいと思っています。そしてスロバキア語という自分にとって全く新しい言語に触れたことはかなり刺激になりました。決して多数派な言語ではありませんが、せっかくなので今後もスロバキア語、もしくはその他のスラブ系言語に触れていくつもりです。

この1年間で成長できたことは、語学やコミュニケーション面の他に行動力です。1年前の自分に比べると、自分から何でも行動できるようになったと周囲から言われます。周りの人の助けが必要なことがほとんどでしたが、様々な問題を自分で解決出来たことは確実に自信に繋がりました。この1年に得られた全てを今後の人生を通して自分の強みとして使っていきたいと考えています。